こんにちは
シュウです。
いよいよバルセロナの現地時間9月14日午後2時から、第37回アメリカズ・カップのセレクションシリーズであるルイ・ヴィトン・カップの準決勝が開始されます。
総当たり戦を勝ち抜いた4チームが、アメリカズ・カップ防衛チームであるニュージーランドと対戦できるたった1つの席をかけて戦うのです。
準決勝の組み合わせ
総当たり戦(ラウンドロビン)を1位で終えたイネオス・ブリタニアが挑戦相手、レースの順番および、最初のレースのエントリーサイドを選びます。
昨日のプレスカンファレンスで、その全てが発表されました。
イネオス・ブリタニアが準決勝の対戦相手に選んだのは、アリンギ・レッドブル・レーシング。
まぁ、これは順当な判断ですよね。アリンギはラウンドロビンでは僅か3勝しか出来ていませんから、イネオス・ブリタニアが決勝に進むためには倒しやすい相手と言えるでしょう。とは言っても、アメリカズ・カップ保持経験チームでもありますから、そう簡単ではないと思われます。というか、そう簡単ではないレース展開を期待しています!
レース順は2レース目で、エントリーサイドはスターボード(右側、つまりは後手?)を選びました。相手の出方を見ながらレースを支配したいという感じでしょうね。
イネオス・ブリタニアがアリンギ・レッドブル・レーシングを選んだので、もう一つの準決勝組み合わせは必然的に、ルナ・ロッソ・プラダ・ピレリ対NYYC・アメリカン・マジックということになりました。
ルナ・ロッソ・プラダ・ピレリのヘルムであるジミー・スピットヒルとNYYC・アメリカン・マジックのヘルム、トム・スリングスビーは2013年のアメリカズ・カップではチームメイトでした。
それが今回は敵同士。ラウンド・ロビンで快走したジミー・スピットヒルはそのままの勢いでトム・スリングスビーを下したいところ。しかし、トムもそう簡単に負けるわけにはいきません。
NYYC(ニューヨーク・ヨット・クラブ)は第1回アメリカズ・カップの優勝クラブ。今回のカップ奪取の熱量は相当なものでしょう。
こちらもかなりの熱戦を期待します。
ヨットレースのルールや見どころ
と、ここで改めて、アメリカズ・カップ、ルイ・ヴィトン・カップのレース方式についてご紹介いたしましょう。
プレ・スタート
まずはスタート前から。
レース開始予定時間の3分前に、主催者からレース実施のノーティスがでます。風の状態を見てそのレースを実施するかどうかを最終判断するわけです。
レース実施が宣言されたら、ポートサイドエントリー(進行方向に対して左側)のヨットはレーススタート2分前の準備信号が出る更に10秒前からスタート1分前までにプレ・スタート・サイドにエントリーします。
対して、スターボードサイド(進行方向に対して右側)エントリーのヨットは、2分前の準備信号が出てから、プレ・スタート・サイドにエントリーしなければなりません。2分より早くエントリーしてしまうとペナルティです。
この画像の場合、アメリカがポートサイドなので2分10秒前からエントリー出来、スターボードサイドのイタリアは2分を切ってからのエントリーとなります。
両艇ともレース開始1分前までにプレ・スタート・サイドに入らなければならず、もし1分前までに入れなかった場合はペナルティとなります。
ペナルティについて
これ以外にも、バウンダリー(レースエリアの境界線)を越えた場合や他艇の進行を妨げる操船を行った場合にはペナルティが課されます。
このペナルティを受けたヨットは、対峙するヨットから75m下がらなければならないため、かなり不利になります。
また、バウンダリーを80m以上超えてしまうと失格となり、自動的に相手チームの勝ちとなります。
スタート前の攻防
時間通りにプレ・スタート・サイドに両ヨットがエントリーすると、より有利なスタート位置をめぐっての攻防が始まります。
ヨットの基本的なルールとして、
・進路がクロスする場合は、右側優先
・同じ進路で、船艇がかぶっている場合は風下優先
・同じ進路で、船艇がかぶっていない場合は、先行する艇が優先
というのがあり、両チームともこれらを駆使して、スタートラインの左側、つまりは風下側から少しでもスタートタイムに近いタイミングでスタートラインを切りろうとするのです。
この画像の場合は、先行するのはアメリカで、船体がかぶっていないのでアメリカがイタリアを牽制しているところです。
ヨットレースの見どころの一つは、このプレ・スタートにあります。
AC75はフォイリングしてこそその真価を発揮するので、プレ・スタートの攻防中に失速して着水しようものなら、相手チームを有利にしてしまう大きなミスとなります。しかし、このミスは結構起きるんですよね。
風が弱い時に着水してしまうとスタートまでにフォイル出来ず、いきなり数百メートルも引き離されてしまうなんてことも。
プレ・スタートは緊張の時間なのです。
先を争うあまり、スタート時間より前にスタートラインを切ってしまうとこれまたペナルティ。スタートしていきなり75mも離されることになるので気を付けなければいけません。
スタート後
この攻防を越え、無事にスタートを切ると、あとはマーク目指してひたすら走るのみ。
スタートからトップマーク、トップマークからボトムマークとマーク間を往復して速さを競います。片道を1レグと数え、基本のレース距離は6レグです。つまりは3往復ですね。
スタートして最初のレグを12分以内に、そして、スタートしてから45分以内に少なくとも1艇がゴールしなくてはならないと規定されているので、風の状態によっては、このレグが短くなったり減らされたりします。
レース中の攻防
レース中の攻防も見どころです。
先に書いた通り、
・進路がクロスする場合は、右側優先
・同じ進路で、船艇がかぶっている場合は風下優先
・同じ進路で、船艇がかぶっていない場合は、先行する艇が優先
というルールがあるので、ヨット同士が近くなったら駆け引きが行われます。
ヨットは風を受けて進むものですから、やはり風上で綺麗な風を受けたいところ。しかし、先行する風上のヨットに邪魔をされて、風下側は綺麗な風を受けられないケースもしばしばです。この場合は、進む向きを変えるというのがセオリーですが、ヨットの向きを変える時にどうしてもスピードが落ちでしまいます。そこが先行するヨットの狙いで、相手を引き離す手段になるわけです。
しかし、風上側がわざと風下ヨットにこの戦術をしかけて失敗すると、
・同じ進路で、船艇がかぶっている場合は風下優先
というルールで、今度は自分たちが操船のタイミングを妨げられるということにもなりかねません。
じゃぁ、そもそも離れて走れば良いじゃないか、と思われるかもしれません。
現在のアメリカズ・カップのヨットAC75は、追い風用の帆・スピンネーカーが無く、追い風でもジグザグに進む必要があります。
なのでどうしても、レース中にヨット同士が近くなることはよくあることなんですよね。これを避けようとすると、頻繁に方向転換をしなければならず、そうするとスピードは落ちるし距離は長くなってしまうしで良いことなしです。
因みに、ヨットの向きを変えるのを、タッキング(向かい風での方向転換)やジャイビング(追い風での方向転換)と呼びます。
ゴール
6レグを走りきったらゴール。先にゴールラインを通過したチームが勝ちです。
ルイ・ヴィトン・カップ準決勝の日程
ルイ・ヴィトン・カップ準決勝では5戦先取方式。一日に各組合せ2レースずつ行われます。
レーススケジュールが決まっているのは19日までですが、ここまでに決着がつかない場合は、23日まで日程が取られているので、勝敗がハッキリするまでレースが開催されます。
ルイ・ヴィトン・カップ準決勝の観戦方法
そんなルイ・ヴィトン・カップ準決勝は、アメリカズ・カップ・オフィシャルYouTubeチャンネルで観戦できます。
ライブ中継開始はニュージーランド時間の9月15日午前0時、日本時間なら9月14日の午後9時です!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。